さて、桜咲くころ私はベイタウン本牧5番街にあるペットショップ・コジマに向かい、ご覧のシャルトリューに再び会いにいった。
そしてあまりのかわいらしさにとうとう近くにいた若い女性スタッフにこう声をかけた。
「すいません。猫ちゃん、ちょっと見させてもらっていいですか?」
すると「もちろん大丈夫ですよ!どの子ですか?」と明るく言ってきてくれたんで「シャルトリューです」と答えると「シャルちゃんですね~」とその女性は返した。
「シャルちゃん」と呼ぶのか。
担当してくれたのはSさんというはきはきとした若い女性だった。
シャルトリューを私に手渡す前に、私の手を消毒してくれた。もう慣れているから何とも思わなかった。
彼女の方はというと、シャルトリューをケースから取り出したあと、体を点検していた。
そして脚の裏を拭いていた。ウンコが付いているとまずいと思ったのだろう。
椅子に座って待っていた私にSさんがシャルトリューを手渡す。
びっくりするほどおとなしかった。いつまでもずっと私になでられるままにしていた。
私の手からすぐに逃げたがったエンゼルのロシアンブルーとはえらい違いだ。
このあたり、人懐っこいシャルトリューの性格故なのかもしれない。
ロシアンブルーにも興味を持っていると菅野さんに話したら、ロシアンブルーの方がやんちゃだと言っていた。アビシニアンはもっとだとも言っていたっけ。
ちゃんと商品知識、あるね。
そこでこう尋ねた。
「これで気に入ったとするでしょう?この猫ちゃんをキープしておいてもらうことはできるんですか?
一番重要な点ですよ。
すると、1割払えば 1週間キープしておいてくれるということだった。
なるほど、そうなんだ。1割ぐらいなら持っているな・・・。
さて、困った。いつまでも猫をこうして抱いているわけにはいかない。
一方シャルトリューは私の手の中でいつまでもおとなしくしていた。時々大きな音がしたときだけびくっとして体を動かすだけだ。
当然のようにSさんは「大人しく抱かれてますね~」と、いかにも「気に入られていますよ」っていう口調をしてくる。
決意しなければならない。
しかしなかなか本気になれなかった。
じつはこの店のシャルトリューはなかなかいいお値段をしていたのだ。
やっとの思いで「じゃ、これお願いします」と私は言った。
購入を決意したのだ。
Sさんがシャルトリューをケースに戻した。
そしてしばらく待たされた。
実はその間に私は何とも言えない気分でいた。
つまり「これでよかったんだろうか?」と思っていた。
いや、シャルトリューを選んだことを後悔したのではない。猫を買う(飼う)決意をしてしまったことを後悔したのだ。
本当に猫なんか飼えるのか、俺。おもちゃを買うのとはわけが違うんだぞ・・・。
結局私はこの何週間か、ずっとそれを気にしていたのかもしれない・・・。
結構待たされてからSさんが戻ってきた。
まずは今までの健康チェック表のようなものを見せられた。
シャルちゃんは 3月に入ってすぐにこのお店にやってきて、確か中頃ぐらいから公開され始めた。
その翌日にだかに軟便が出たってことで、それが記されていた。
環境が変わったためだろうってことだった。
しかしそのあとは一度も軟便になってないってことで、健康状況は良好ってことのようだ。
続いて「CA(コンパニオンアニマル)内金に関する約定書」というのにサインをさせられた。
そして 1割の内金を支払ったのであった。
そうそう。ケージ、キャリー、フード、食器などがセットになった奴があって、薦められた。確か 4~5万したんじゃないかな?
でもそれは断った。時間はあるんだ。自分で揃えたい。
というわけでSさんに「じゃ、よろしくお願いします」と言い、ベイタウン本牧5番街を後にした。
道路の反対側にはイオンのビルがあった。その隣のビルもお洒落だし、流石は横浜っていう感じがした。
このとき私は手帳にこう書いている。
「全然すっきりはしてないよ。マリッジブルーみたいだな」
そう。結婚相手が決まってしまったことによるマリッジブルー的な気分に陥っていたのだ。
根岸駅行きのバスに乗り込む。
バスは空いていた。「これなら猫を持って帰るとき、楽そうだな」と思った。
バスに揺られているうちに、やっと嬉しさがこみあげてきた。
面白いものだ・・・。